うつわ歳時記 これまでの表紙


赤の食卓。 グーラシュ


 劇的に秋になったからか、今年の紅葉はきれいですね。めっきり寒くなりました。仕事場にストーブを出しました。ストーブの火を見ると、なにかコトコト煮込みたくなります。と、いうわけでハンガリーの農民料理グーラシュを作りました。 

  


特に珍しいものでもない家庭料理です。玉葱を炒めてしんなりしたら牛の脛肉を一緒にいため、あとはその他の具材を適宜入れてスープストックで煮込むだけです。ほぼ火の通ったところでトマト・ピューレを入れ、最後に、赤ワインとリンゴを入れて15分くらい煮てできあがり。写真のような、きれいな日本のリンゴではなく、野生的なすっぱいちっちゃい風で落ちたような林檎だったら、もっとディープ・ヨーロッパの哀愁がただようのでしょうけどね。



うれしいことに地物の赤カブがあったので投入。赤蕪ってなぜかハンガリーとかポーランドの辺りのイメージがあるんですけど、根拠はありません。ビーツを連想してるんでしょうかね。赤ワインも飲み残しをドバッと入れて、なんともいい加減ですが、煮込み料理ってあまり失敗のないところがうれしいですよね。



さて写真てまえ、グーラシュは赤絵石榴文平鉢に。その右は赤絵龍文盃です。これで飲むとスーパーで買ったワインもなんだかおいしい。新作の赤絵金彩飯碗にほうれん草の胡麻和え、赤絵色紙文様小皿にチコリと林檎と胡桃のサラダ。

まんなかは赤絵唐子遊び馬上盃につぶ貝のお作り赤蕪の浅漬け添え、左側もチーズと白山豆腐のサラダ。赤絵カーネーション図小鉢。奥のパン皿はニンジンの模様です。赤い食卓も楽しい。



赤い色は食欲を刺激するともいいます。燃える生命の色でものね。同時にそれは何処か厳粛です。西洋の裁判官のマントの色ですし、地獄の裁判官閻魔大王の衣の色でもあります。洋の東西を問わず、赤を審判の色と感じるとは、不思議ですね。



庭の紅葉も色づいてきました。万葉の時代から秋の紅葉と春の花とどちらが好ましいかと風雅な物比べがされてきましたが、額田王は、手に取ることのできる紅葉の方が哀れ深いと秋の紅葉に軍配を上げました。こんな審判なら、優雅なものですね。私も、この頃は、その判定を支持したい気がします。輝かしい紅葉の方が、より鋭く悲しい気がしますから。


 


葉にふれてふれて落ち行く落ち葉かな   おるか  


 


                           2014年11月3日