うつわ歳時記 これまでの表紙


もう、秋だ!


 このところ、めっきり涼しくなりました。このまま本格的に秋になるのでしょうか。虫の声と蝉の声がせめぎあって窓から入ってきます。思い返せばあっという間だった夏の太陽。秋の歌の準備をしなきゃ…とめげずにお月見用意です。うまれついてのキリギリス体質はもう、なおりませんね。計画的な蟻さんのまねをしたくても、無理なものは無理といなおっています。 


 写真奥の、染付け芙蓉手兜鉢には加賀葡萄。加賀市は葡萄も取れるんですよ。有名な産地と比べたら量は少ないと思いますが、なかには「ルビー・ロマン」のような高価な品種もあります。いまだ食べたことありません、高すぎて。 


 その左下、菊の葉向付には、焼き茄子の小エビ餡かけ。魚焼きグリルで焼くと簡単なことに気づいて、このところ御茄子は専ら焼いています。中央は筒向うに、めかぶとろろとかぼちゃなど野菜の揚げたの。写真を取っている間に倒れちゃったんですけど。


 そして右側、赤絵金彩「茜雲」徳利におなじく赤絵「楽』字ぐいのみです。小さなぐいのみの見込みに「楽」の一字を画いています。「らく」と読むのも楽しいし、「がく」と読めば御酒をいただきながら音楽を聴く気分になれますでしょう?


 そして、長皿二種。手前のお皿があれば、お月見の夜、もしかして曇っていても大丈夫です。ほら満月がお皿の上に!じつはこの上に金彩を散らすか考えているところで、どうしようかと、使ってみたところです。どうしようかなぁ。金彩を入れると材料費がかかることは勿論、もう一度窯に詰めて焼成する手間がかかります。これまでの経験から、悩むのだったらシンプルなほうが良いということもあります。しかし、金銀彩の華やぎを添えたい気もしますし…。悩む。 


 もう一方の長皿は、握り寿司など並べると素敵かなと思ったのですが、握りはできないので、ありあわせのものを並べました。左の手まり寿司ふうにみえるのは、たんなるおにぎりです。そのほか卵焼きとか残り物も少しづつ並べるとそれなりにみえませんか!? 


 気のせいか風の音が変ったような気がします。葉柄が硬くなってきているからだろうと勝手に思っていますが、古今集の秋の部第一番「秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる」は、まったく実感ですね。人口に膾炙するわけ、わかります。すぐに日暮れが早くなって、時間は過ぎていってしまうんだ。悩んでいるひまがあったら手を動かそう。 


と、いいつつも、小さな秋の花を見つけたりすると、すぐ手の止まってしまうキリギリス。 

 


    草の花昨日の風の吹き寄りて   おるか  


 


2014年9月1日