うつわ歳時記 これまでの表紙


冷たいおやつ


 八月ともなれば、俳句の上では、すでに晩夏。立秋も間近です。たしかに夕暮れの時間が早くなってきたのは感じます。気温は暑くてたまりませんが、わたしは、この夏の終りの風景はきらいじゃありません。光と影のコントラストに惹かれます。遠くの山並みもテーブルに置かれた小さなカップも濃い影を置いてもの思わしげです。


  青春のいつかは過ぎて氷水   上田五千石


って感じですか。氷菓の句は、そんな一抹の哀愁ただようものが多いような気がします。それとも、自分がそういう句が好きなものだから、憶えているだけなのか


  父祖哀し氷菓に染みし舌出せば   永田耕衣


耕衣の句は複雑な心境を、小さな事物小さな行為で、読者の肩をバシッと叩いて思い知らせる、そんなところがありますね。この句も、誰もわかってはくれない悲しみに太宰治的な道化じみた行為をして、またそれで自身が哀しくなる。そんな感じがします。ああ、文学者ってどうしようもないもんだなぁ。


さて、写真右手前の小茄子向付には加賀のお菓子、紫雲石。じゃみじゃみした食感が涼しい。蓮華には加賀の御干菓子。加賀はおかしどころといわれますが、確かに和菓子はおいしくてきれいです。有名な御店のでなくとも、ね。


瓜形小鉢には白玉餡蜜。染付け葡萄文様馬上盃にはフローズンゼリーです。ギザギザの小皿も形が涼しそうだと思って使ってみました。赤絵の馬上盃にはありあわせの果物。奥の手つき鉢には、団扇煎餅。ありふれたお菓子ばかりですが、器で勝負ってことで。


器の下敷きは、ちょうどこんな長さの紙があったので、金魚描いてみました。写真ではよく見えませんが水流も描いてあるんです。今月の句も。


 そういえば紙もそろそろなくなってきたし、今立町まで行って買ってこないと。越前和紙の里、福井県今立町はここからそんなに遠くでもありません。それにほど近くに、猫の聖地、猫寺こと御誕生寺があるので、これは一度是非参拝しないと、と思っています。座禅する膝に猫が乗ってくれたらうれしいだろうな。猫と一緒に入れるお墓あるのかな。



俳句、画面で読みづらそうなので出しておきます。  


       


ささめきの渦白玉の匙を逃げ   おるか  


 


                           2014年8月4日